この一見当たり前のような過程を、1→2→3、そしてまたそれを土台として新たに1へと繰り返しているうちに、人間は驚くほど沢山の能力を体得し成長していきます。これを全面的に教育へと応用したのがスズキ・メソードです。普段、学習の過程では、つい3の段階が見過ごされがちです。
スズキ・メソードでは出来るようになってからが本当のスタートです。
教本に付属のCDを繰り返し聴き、曲に親しむところから始めていきます。
見聞きを沢山繰り返すことで、文字や記号では到底説明がつかない難しい微妙なニュアンスまでも、圧倒的に早く、しかもセンスよく身につけることが出来るようになっていきます。
また、楽譜に頼らないことで、この時期にもっとも大切な、楽器を構える姿勢、音感、そして楽器が作り出す「音」そのものに集中して取り組むことが出来ます。
また楽曲を暗譜しなければなりませんから、記憶力も同時に養うことが出来るのです。
いずれかだけにやる気が欠けていたり、反対に溢れ過ぎていたりしては、しっかりした前進が望めません。
スズキ・メソードの指導者は決して生徒だけを対象としたレッスンをしていません。同時に保護者のみなさんにもお伝えしているのです。
レッスンで指導者が伝えたこと、示したことを、ご自宅では親子で協力して繰り返し取り組んで頂き、また1週間後のレッスンで成果を発表する。
そしてその時々の状態を判断して指導者が適切なレッスンをする。 こうした一歩一歩の理想的な前進が、大きな達成を生むことでしょう。
スズキ・メソードは、単に技術の進歩や、演奏家を育てることを目的としているのではありません。
課題を達成するために繰り返し練習する過程で身に着く「忍耐力」「持続力」「達成感」は自信に繋がり、楽器の習得のみならず、あらゆる学習に必要な基盤を形成します。
生徒も保護者も音楽を学ぶことを通じて心を育み、文化的な人間に共に成長していくこと、それが鈴木鎮一の目指した音楽教育、スズキ・メソードなのです。